後期高齢者の入院費用はいくら?医療費の負担を軽減する方法

突然の入院、医療費の負担は想像以上に重く、家計を圧迫してしまうことも少なくありません。特に、75歳以上になると自己負担割合が1割になる後期高齢者医療制度とはいえ、長期入院や高額な治療費がかかる場合、支払いが困難になるケースもあります。しかし、ご安心ください。実は、後期高齢者のための入院費用の一部負担金減免制度や、高額療養費制度など、負担を軽減するための様々な制度が存在します。後期高齢者の入院費用について、自己負担額の仕組みや、費用を抑えるための制度について詳しく解説します。さらに、分割払いなどの支払い方法や、高額療養費制度の手続き方法についても分かりやすくご紹介します。記事を読めば、入院費用に対する不安を解消し、安心して療養に専念できる準備を整えることができます。ぜひ、最後までご覧ください。

後期高齢者の入院費用はいくら?

75歳になると後期高齢者医療制度に移ります

後期高齢者医療制度とは、公的医療保険の一種であり、対象となるのは75歳以上の人と、後期高齢者医療広域連合から認定された一定の障害がある65歳から74歳までの人です。75歳になると、仕事をしているかどうかに関わらず、それまで加入していた国民健康保険、健康保険、共済などから自動的に後期高齢者医療制度に移行します。

後期高齢者医療制度の窓口負担割合は1割~3割

窓口負担割合とは、医療機関で診療や治療を受けた際に、その費用のうち患者が直接支払う割合を指します。日本の公的医療保険制度では、患者は医療費の一部を自己負担し、残りは健康保険が負担します。 後期高齢者の医療費の窓口負担割合は世帯で判定します。一般所得者等は原則1割負担ですが、一般所得者等のうち一定以上の所得がある人は2割負担に変更されました(2022年10月から導入された新しい負担割合)。現役並み所得者は3割負担となります。

一般所得者等 窓口1割負担 課税所得が28万円以下の世帯で、ほとんどの後期高齢者(後期高齢者全体の70%)が該当します。一般的な目安として、年金収入のみ、または年金収入と少額の他の収入がある場合。
一定以上所得 窓口2割負担 単身世帯で年金収入とその他の合計所得金額が200万円以上。
複数世帯で年金収入とその他の合計所得金額が320万円以上。
現役並み所得 窓口3割負担 単身世帯で年金収入とその他の合計所得金額が約383万円以上
複数世帯で年金収入とその他の合計所得金額が約520万円以上

後期高齢者医療制度の自己負担限度額とは?

後期高齢者医療制度では、入院費用などの医療費が高額になった場合の自己負担限度額が所得に応じて設定されています。この限度額を超えた分は高額療養費として健康保険から払い戻しされます。所得や年齢によって限度額は異なります。

住民税非課税世帯 24,600円
15,000円
一般所得・一定以上所得 57,600円
現役並み所得 80,100円 + (総医療費 - 267,000円)×1%

後期高齢者が手術を受けたときの入院費用の負担例

後期高齢者の手術 入院費用

後期高齢者(76歳)の鈴木さんは心臓バイパス手術を受けることになりました。手術費やベッド代など入院の費用は合計で300万円かかる見込みです。鈴木さんの窓口負担割合は2割で、自己負担限度額は57,600円です。 この場合、鈴木さんは退院するときに病院にいくら払うのでしょうか?

■鈴木さんが退院するときに病院の窓口で支払う金額
まず、窓口で支払う金額を計算します。窓口負担割合が2割(20%)ですので、通常であれば、医療費300万円の20%を窓口で支払うことになるので60万円です。

■高額療養費制度を利用する
退院時には一旦60万円を支払いますが、高額療養費制度を申請することで、自己負担限度額を超える分が後から払い戻されます。

鈴木さんの自己負担限度額が57,600円ですので、支払った60万円と限度額の57,600円の差額542,400円が払い戻されます。

これにより、鈴木さんの最終的な医療費負担は自己負担限度額の57,600円となります。

  • 退院時に病院に支払う金額: 60万円
  • 高額療養費として後から払い戻される金額: 542,400円
  • 最終的に鈴木さんの自己負担となる金額: 57,600円

入院費用の負担を軽くする制度

さきほど、高額療養費制度について少しお話しました。入院費用の負担を軽減するためには、いくつかの公的制度を活用できます。

高額療養費制度 医療費が高額になった場合、自己負担額を超えた分の医療費を後日支給する制度です。一時的に立て替える必要があります。
限度額適用認定証 限度額適用認定証を事前に取得しておくことで、医療機関での支払いが自己負担限度額までになる制度です。一時的な立替え払いが不要になります。
高額療養費貸付制度 高額療養費制度で返還されるお金が、すぐに必要になる場合に利用できる制度です。無利子で貸し付けてくれるので、金利の負担はありません。

高額療養費制度、限度額適用認定証、高額療養費貸付制度について、具体的に見ていくことにしましょう。

まとまったお金を用意できるときは高額療養費制度

高額療養費制度は、一定額以上の医療費を支払った場合、その超過額の一部が返還される制度です。手続き方法は、加入している健康保険組合や国民健康保険によって異なりますが、一般的には以下の流れになります。

申請に必要なもの

  • 健康保険証
  • 医療費の領収書
  • 高額療養費支給申請書
  • 振込先口座の情報(口座番号、銀行名、支店名)

申請方法

まず、病院や薬局で診療や薬の購入時に医療費を支払い、このときに領収書を必ず保管しておきます。その後、高額療養費制度を利用するために加入している健康保険組合に問い合わせ、申請書を入手します。この申請書は健康保険組合の窓口や公式ウェブサイトからダウンロードできることが多いです。

次に、申請書に個人情報(氏名、住所、電話番号など)、医療機関名、診療日、診療内容、支払った医療費、振込先の銀行口座情報などを記入します。記入が完了したら、医療費の領収書(原本)、健康保険証のコピー、振込先口座の通帳またはキャッシュカードのコピーを申請書に添付します。

これらの書類を揃えたら、健康保険組合の窓口に持参するか、郵送します。提出先の住所や受付時間は、健康保険組合のウェブサイトや問い合わせで確認します。申請内容が審査され、支給が決定すると、指定の銀行口座に高額療養費が振り込まれます。通常、申請から振込までには数週間かかることが多いです。

注意点

高額療養費制度には申請期限があります。診療月の翌月から2年以内に申請を行わないと、高額療養費は受け取れません。

まとまったお金を用意できないときは限度額適用認定証

後期高齢者入院費用負担の軽減  限度額適用認定証

高額療養費制度を利用すれば医療費が自己負担限度額を超えた場合、超えた額が健康保険組合から払い戻されます。しかし、後から払い戻されるとはいえ、一時的には自分で負担する必要があり、 まとまったお金が手元にない人には大きな負担になります。

そんなときに利用したい制度が限度額適用認定証です。 限度額適用認定証を提示することで、医療機関の窓口での支払いが自己負担限度額までに抑えられます。これにより、高額な医療費を一時的に全額支払う必要がなくなります。

申請に必要なもの

  • 健康保険証
  • 申請書(限度額適用認定申請書)
  • 印鑑(場合によっては必要)

申請方法

まず、限度額適用認定証の申請書を入手するために、加入している健康保険組合に問い合わせます。申請書は健康保険組合の窓口や公式ウェブサイトからダウンロードできることが多いです。

次に、申請書に個人情報(氏名、住所、生年月日、電話番号など)、健康保険証の記号・番号、所属する健康保険組合の名称、申請理由(高額な医療費が見込まれるためなど)を記入します。

その後、記入済みの申請書に健康保険証のコピーと、必要な場合は印鑑を添えて必要書類を準備します。これらの書類を揃えたら、健康保険組合の窓口に持参するか、郵送します。提出先の住所や受付時間は、健康保険組合のウェブサイトや問い合わせで確認してください。

申請内容が確認されると、限度額適用認定証が発行されます。通常、申請から認定証の受け取りまでには数日から一週間程度かかり、認定証は郵送されることが一般的です。

受け取った限度額適用認定証を、病院や薬局の窓口で提示することで、支払い時に自己負担限度額までの支払いに抑えることができます。

注意点

医療費が高額になると予想される前に申請しておくと安心です。限度額適用認定証には通常1年間の有効期限があり、有効期限が切れる前に再度申請する必要があります。さらに、住所や氏名が変更になった場合や認定証を紛失した場合は、速やかに健康保険組合に連絡し、再発行の手続きを行うことが重要です。

高額療養費貸付制度

高額療養費貸付制度は、医療費が高額になった場合に、患者が一時的に医療費を立て替える負担を軽減するための制度です。 健康保険や国民健康保険など、何らかの公的医療保険に加入している人が 高額療養費の対象となる医療費を支払ったとき、または支払う予定があるときに利用することができます。

月ごとの自己負担限度額を超える医療費が対象で、申請者が自己負担する医療費の範囲内で、限度額を超える部分が貸付金額となります。 貸付額は、最終的に高額療養費として支給される額を基準に決定され、 貸付を受けた後、高額療養費が支給されると、その金額から貸付金が差し引かれ残額が申請者に支給されます。 貸付を受けた金額は最終的に支給される高額療養費で相殺されるので返済の必要はありません。 申請先は加入している健康保険組合や市町村の国民健康保険担当窓口で、 医療費の支払い後、または支払い予定が確定した時点で早めに申請するとよいでしょう。

入院費用が払えないときは分割払いも可能

後期高齢者の入院費が払えないときは?

入院費用が一括で払えない場合は分割払いを検討してください。病院には費用に関する相談窓口が設置されており、分割払いや支払期日の延長が可能なケースもあります。入院前に病院の窓口に相談してみましょう。分割払いの手数料は、病院によって異なります。

医療費用をカードローンで分割払いする方法もあります。病院と提携する金融機関から医療ローンを利用すると、保険適用外の治療に使えるメリットがあります。

銀行系医療ローンは、比較的低い金利(2.5%から18%程度)が魅力ですが、審査基準が厳しく、通りにくい場合がある点がデメリットです。

医療機関と提携している信販会社の医療ローンは、審査が比較的通りやすい(5%から18%程度)というメリットがあります。一方、金利は銀行系よりも高めです。

個人と金融機関の融資マッチングプラットフォームは、審査基準が比較的緩く、多様なニーズに対応できる(5%から18%程度)というメリットがあります。ただし、金利が高めに設定される場合がある点は注意が必要です。

近年、医療費の高騰に伴い、医療ローンの需要がますます高まっています。 それに伴い、様々な金融機関が医療ローンを提供しており、金利や条件も競争が激化しています。

医療ローンを選ぶ際には、以下のポイントを参考にしましょう。

  • 金利: 複数のローンを比較して、最も低い金利のものを選ぶ
  • 返済期間: 無理なく返済できる期間を選択
  • 審査基準: 自分の属性に合ったローンを選ぶ
  • その他: 諸費用や付帯サービスなども考慮

医療ローンを利用して支払った医療費は、医療費控除の対象となる場合があります。 また、一定額以上の医療費を支払った場合、超過額の一部が返還される高額療養費制度もあります。

医療ローンは、利用目的や個人の状況によって最適なものが異なります。 複数のローンを比較検討し、自分に合ったものを選ぶようにしましょう。

医療費に関する不安は、医療機関や金融機関の担当者に相談しましょう。 専門知識を持つ担当者が、個々の状況に合わせて詳しく説明してくれます。

まとめ:後期高齢者の入院費用の負担を軽減するために・・・

後期高齢者の入院費用に対する不安を軽減するため、さまざまな制度と対策を詳しく解説しました。自己負担割合の仕組みや、高額療養費制度、分割払いなどの支払い方法を理解することで、医療費の負担を大幅に減らすことが可能です。

特に、長期入院や高額な治療費がかかる場合でも、適切な制度を利用すれば、支払いが困難になるケースを防ぐことができます。この記事を参考に、医療費の不安を解消し、安心して治療に専念できる準備を整えてください。今後も健康に気を付けながら、必要なときには適切な支援を受けられるよう備えておきましょう。